昨今世間を賑わせているエボラ出血熱、デング熱。そして、毎年冬場になると蔓延するインフルエンザ。現在でも静かに忍び寄る結核。私たちはこのような様々なウイルスや細菌、カビなどの病原微生物に日々健康を脅かされています。しかし、働きの異なるいろいろな免疫細胞がオーケストラのように協調・連携してこれらに対抗し、私たちの体を守ってくれています。 今回は、感染症ばかりでなく、がんや様々な病気に対しても心強い力となっている「免疫」についてお話しします。

1928年、英国の細菌学者アレキサンダー・フレミングによって世界最初の抗生物質「ペニシリン」が発見されました。以来、人類は細菌感染の脅威から守られ、寿命が大きく延長していくことになります。これば医学史上最も輝かしい業績の一つとして今後も語り伝えられていくことでしょう。
しかしその代償として、腸内細菌のバランスが崩れるなどで人に本来備わっている免疫力は弱まり、さらに、生活環境の衛生状態が良くなり病原微生物との戦いの機会が減ったことや、多彩な心身ストレスなどにより免疫力の低下や変調が助長されてきています。
また、病原微生物の脅威は感染症にとどまらず、がんや動脈硬化、糖尿病、リウマチなど、様々な病気に密接に関わっていることが近年の研究によりわかってきており、現代に生きる私たちは、免疫力の維持・強化に、より留意する必要にせまられているのです。
免疫力は、aging(老化/加齢)、 悪しき生活習慣、ストレスなどで低下しますが、これらは相互に密接に関連し合っています。
つまり、免疫力を低下させたり変調を起こさせないために私たちにできることは、生活習慣を適正化し、ストレスを回避・解消することなどで、余計に老化を加速させずに若々しさや健やかさを保っていくこと、つまり、体の内側からのアンチエイジングな取組みが望まれるということです。
「笑うこと」でストレスが軽減されたり、免疫力が高まることはよく言われることであり、医学的にも証明されています。これについては、「笑いは病を治す」といった記載が旧約聖書にもみられており、笑うことの恩恵が古代文明の時代から人々の間で経験的に知られていたということなのでしょう。
また、コスメティックセラピー(化粧療法)と言われるように「お化粧」についても「笑うこと」と同様の効果があるとされていますが、森林浴が免疫の主力細胞であるNK細胞(ナチュラルキラー細胞)を活性化することが近年の研究で確認されています。
2泊3日の森林浴の旅で、NK細胞の活性度が翌日には43%アップ、1週間後でも45%と維持され、さらに1か月後でも23%アップの状態であったのに対し、森林浴のない旅ではNK細胞の活性化はみられなかったということです(日本医科大学の研究)。
森林浴はこのような免疫力を上げる力があるばかりでなく、副交感神経の活性化によりリラックス効果やストレスの軽減効果ももたらします。様々なストレスに晒され、慢性的な疲れを感じている私達は、ときには森林浴を満喫し、おいしく健康的な食事を家族や友人と楽しみ、ゆったりとした気持ちと笑顔で過ごす旅で心身をリフレッシュしたいものです。

免疫力強化対策10か条
1.腸内環境を整える
腸は外界からの病原体の侵入を食い止める最大の防波堤(免疫器官)であ
り、身体の全免疫細胞のおよそ60 % が待機している。
腸内細菌のバランスを整え、便通をよくするなどで腸内の環境を整えることは、免疫力の維持・強化のためには最も大切である。
また、腹を決める、腹を探る、腹黒いなど、腹(腸)と心(脳)の関係を示唆する言葉があるように、腸と脳は密接な関係があることから(腸脳相関、腸は第2の脳)、腸を整えることの意義が医学的にも検証されてきている。
2.十分な睡眠の確保
身体は夜間睡眠中に大量に分泌される成長ホルモン(若さのホルモン)により作られ、修復される。
3.適度な運動
腸の動き(ぜん動)を活発にしたり、免疫システムを活性化する
4.十分なタンパク質の摂取
免疫細胞を作る材料の供給や、免疫力が発揮される環境を整える(ヘモグロビンによる酸素の運搬やホルモンによる情報の伝達など)。
※ヘモグロビン、ホルモンはタンパク質から作られる。
5.免疫力を高める栄養成分の摂取
キノコ類、海藻類、長芋、ブロッコリースプラウト、にんにく、ヨーグルトなど
6.抗酸化力の強化
野菜やお茶類 など
7.抗糖化力の強化
炭水化物(糖質)を控えめにする、野菜を先に食べる など。
8.ストレスの回避・解消
ストレスホルモン(コルチゾール)は免疫力を下げるため、ストレスの回避・解消に努める。
9.森林浴
免疫細胞の主力として働くNK細胞(ナチュラルキラー細胞)を活性化する。
10.笑い、化粧
免疫細胞を活性化する。